大規模な品薄問題と、今後の予測

2022年現在も続いている処方せん用医薬品の大規模な品薄問題

患者さんはもちろんのこと、私たち医療機関も「いつ正常化するのか?」ということに関心を寄せておりますが

私見を申せばこの品薄は根幹に深刻な問題を抱えたもので、早々に解決するものではないと考えています

 

この問題の発端となる令和2年に処方せん医薬品への異物混入による死亡事故を起こした小林化工、

また不正な製造手順が発覚した日医工などに業務停止命令が下された事は過去のブログでも触れましたが、

それよりはむしろその後に多数の製薬企業が慌てて行った自主回収こそがこの問題の本質となっています

それら製薬メーカーはあくまでも“自主点検による自主回収”を行ったために特に行政処分は下されませんでしたが、

その慌てぶりから相当な違反が含まれていたであろうことは容易に想像できてしまいます

つまるところ今回はたまたま小林化工や日医工の問題が明るみに出ましたが、ややもすればどの製薬企業が同様の事故を起こしていたとしてもおかしくなかったということです

私たちの健康・生命を委ねることとなる医薬品

それを製造する企業が大手をふくめてここまで信頼を失うこととなってしまったのはなぜか?

これについて“不正によって何を得ようとしていたのか”という方向で考えると理解が進みます

 

あくまでも推測の内ですが、まず第一に「儲からないから」というシンプルかつ深刻な理由が浮上します

製薬企業の利益構造を単純化すれば“クスリを作って売る”ということになりますが、主力となる処方せん医薬品の値段は

“薬価”といって国が定める公定価格となっており、さらに言えばそれは医療費削減のために年々削られることとなります

 

そのため開発力をもった製薬企業は画期的な新薬を開発することで1錠で数万円におよぶ高額な医薬品を承認させ、

それらを販売することで次の製品を開発し、、といったことを繰り返しています

しかし苦心して開発した薬剤もいつかは低額化し、あるいはジェネリックに置き換えられていますので大きな製薬企業も決して左うちわとはいきません

 

開発力に乏しい中小メーカーであればなおのこと、今ある既存品を大切にPRしていかねばなりません

度重なる薬価ダウンの結果として、1錠あたりわずか6円足らずまで下げられ続けた薬剤も少なくありません

1箱100錠入りで約600円の薬剤、果たしてそれで利益はでるのでしょうか?

医薬品の元となる原薬と、バルクと呼ばれる添加物(錠剤や粉の形を作る部分)を仕入れて

そして仕入れた医薬品原料を保管する場所と、製造工場や完成品の保管場所などを確保し

さらにはその全てに管理薬剤師を配置したうえで適切に医薬品を製造し

卸業者に配送してハイ終わり、ではなくさらにこれらの製品についてPRするための人員(MR)もおかねばなりません、、、

こういったことを一箱当たり600円未満で行えるかというと、非常に難しいものになるでしょう

せめて1箱5000円(1錠あたり50円)くらいを維持した主力商品を保有しているメーカーであればこうした赤字製品を抱えつつ総合でなんとかする余力があるかもしれませんが、そうした売れ筋を持たない中小メーカーにとっては死活問題となります

中には思い切って販売から撤退してしまうメーカーも少なからずありますが、撤退によってその薬を頼みにしている患者さんに大きな負担がかかることとなります

それを防ぐために、自社に比べて管理コストが低い他社に権利を譲渡することもあります

患者さんにとっては薬が存続されますが、管理コストが下がる即ち不正が横行したり死亡事故などが起こるリスクが跳ね上がるということになります


患者さんからすればいずれも好ましくないところであることは間違いありませんが、もはや製薬メーカーがその利益を担保できない以上はこういったリスクも覚悟しなければならないのかもしれません

今、品薄となっている製剤もいずれはその製造管理手順を正常化したうえで復旧することでしょうが、

そうした正しくコストのかかる手順を今後何十年と維持してゆけるのか?

それともいつかまた不正に走らざるをえなくなるのか?

今は何も確証がありません

ただ不安を煽り立てるだけのコラムとなってしまう恐縮ですが

私たちに何ができるのかを考えると…例えばその製造メーカーの応援(感謝する)があるかもしれません

 

私も低薬価医薬品を取り扱うメーカーに所属していたことがありましたが、

もやは利潤どうこうよりも製薬企業としてのプライドだけで販売を続けている状況に近いと思われます

その矜持を感じ取っていただければ製薬企業冥利に尽きるのではと思います

あとはやはり、政治への働きかけでしょうか

一錠10円足らずのクスリがある一方で、1錠数万円単位の高度な抗がん剤や難病の治療薬が存在します

そういった薬剤の必要性については是非もありませんが、かといってすべての方がその恩恵にあずかれない一方、

それらの高額を維持するために低額化した薬剤がどんどん切り捨てられるのは個人的に不平等に感じます

こういった点に着目し、偏りの是正を目指す団体をプッシュできればまた違う未来もあるかと思いますが

医療だけが政治の争点でない以上、なかなか難しいことでもありますね

さて話が散らかってしまいましたが、速い話が【この品薄はなかなか長引きそうです】ということです

私たちもできる範囲で頑張ります

​奪い合えば足りない、分け合えば余るの精神でどうにか耐えていきましょう